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仙台市立病院採血器具使い回し 市長「非常に遺憾」 (Kahoku Shimpo, 2008/6/11)
http://www.kahoku.co.jp/news/2008/06/20080611t11038.htm

採血器具使い回し、健康イベントで4千人に 福岡市 (朝日新聞, 2008/6/16)
http://www.asahi.com/national/update/0616/SEB200806160003.html


採血器具の使いまわしネタがブームのようです。
チャンス到来、view数の稼ぎ時とばかりに、いかにもなタイトルで
不安をあおる記事が次々と出ているようですが・・・



採血針とホルダー、真空採血管。真ん中が問題の「ホルダー」。
(Image: 医療安全推進ネットワーク)


「採血器具」とひとくくりにすることで、あたかもさまざまな医療機関で
採血針を使いまわしていたかのような記事ばかりを見かけますが、
の使いまわしと、真空採血管のホルダーの使いまわしは
分けて考えないといけません。
針の使いまわしは当然、重大な倫理違反です。)

きちんと滅菌消毒したホルダーは感染経路にはなり得ません。
これが汚染の原因となるなら、採血時に腕をしばるバンド(駆血帯)や
ひじをのせる台など、採血を行う場所のすべてを使い捨てにしないと
いけなくなります。
危険があるとすれば、ホルダーを滅菌する際に、作業者がミスで
付着血液により感染してしまう可能性ですが、これは医療機関側の
リスクであり患者側のリスクではありません。

むしろ、
針は使用の都度交換したが、皮膚が接するキャップ部分は
消毒し再使用した。使い回しした患者は100―150人と
みられる。
このような記事を書くことで
「消毒しても問題なほど、患者との間接皮膚接触は危険なのか」
と勘違いした人が、肝炎患者やエイズ患者などに対して
差別的な言動を行う可能性のほうが危険かと。





採血方法に関するゴタゴタの裏事情は↓に詳しくまとめられています。

採血方法を巡る医療現場の混乱に終止符か!?
標準採血法のガイドライン公表と真空採血管の騒動の行方
(医療安全推進者ネットワーク)
http://www.medsafe.net/contents/recent/52jccls.html


そもそもの発端は、内部を滅菌処理していない一部の真空採血管を
使用した場合に、採血した血液が逆流して、汚染された血液が
体内に入ってしまう、という可能性が指摘されたことでした。
この問題に対し、厚生労働省が逆流を防ぐための通知を出します。

真空採血管の使用に関する厚生労働省通知文
(平成15年11月17日発及び平成17年1月4日発)
http://www.jamt.or.jp/information/official/h17/050111.pdf

しかし厚労省通知の手順にそのまま従うと、
駆血帯を外す手順の違い
などにより、
患者によっては採血が困難となるなどの問題が発生して
現場に大きな混乱を引き起こしてしまいます。
事態を収拾するため、JCCLS(日本臨床検査標準協議会
)が実情に即した
採血手順ガイドラインを作成し、なんとか混乱は収まりました。
これで皆happy、だったはずなのですが・・・

ここで厚労省通知とJCCLSガイドラインで、ホルダーの扱いに
差が出てしまいました。

厚労省通知では、
「ホルダーは患者ごとの使用とし、使用後は廃棄すること。
(ホルダーに血液が付着した場合は、交差感染のおそれが
あるため。)」
と書かれています。

対するJCCLSガイドラインでも同様に
さらに、ホルダーに付着した血液を介した患者間の
交差感染も起こり得ると、JCCLSは指摘する。
真空採血管をホルダーから抜く際、真空採血管に
穿刺する 側の針に装着されたゴムスリーブに血液が
付着し、それがホルダーを介して別の患者の体内に
入り込む危険性があるというのだ。そのため、
患者ごとにホルダー を交換し、原則、使い捨てに
するよう求めている。
というように「原則」として使い捨てにすることが求められています。
ただし、ガイドライン作成者のコメントで
ただ、現時点ではホルダーの供給体制が
十分ではない可能性もあるので、過渡的には
洗浄・消毒による患者ごとの交換でもやむを
得ない。その場合は、洗浄の効果やホルダーの
劣化に注意をして欲しい
とあるとおり、使い捨てがベストとはしながらも、過渡的には
充分な洗浄・消毒で代用することも現状ではやむをえないと
しています。

まあ、実際は
厚労省通知のほうも
「ホルダーは医療用具でないため、当局が使い捨て化を
義務づけることは出来ない」(厚労省安全対策課)
というくらいの内容だったようです。
そもそも通知には法的拘束力は無いはずなのですが・・・


つまり、現実的に使えない厚労省通知ではなくJCCLSの
ガイドラインに従う多数の医療機関では、最終的には
ホルダーは使い捨てにするのが望ましいが、現状では
供給やコストを考えて、現場の責任できちんと洗浄・
消毒して
使え、という認識だったのです。
それをマスコミが

「通知と手順が違う」

などと特ダネとして飛びついた結果、このような騒ぎに
なってしまった。
これまでの経緯や、ホルダーをきちんと洗浄・消毒して
再利用することのリスクは実際どれだけあるか、ということを
調べようともせず。

医療機関側も、きちんと反論すればよいのですが・・・
反論すれば余計に叩かれる、というジレンマがある以上、
ひたすら記者会見で謝罪するしかないのが切ないところ。
まあ、燃え広がる前にトップがひたすら謝るというのは
リスクマネジメントとしては教科書どおりの行動です。





厚労省の通知にあくまでも従うべき、というのなら、それはそれで
一つの判断かと思います。
それならば
厚労省が順次、きちんと周知徹底していけばいいだけの
ことです。いきなり
「明日からソレ禁止ね」なんて通知を出して
うまくいくはずがありません。メーカーのホルダー供給を増やしつつ
順次手順を変えていけばいい話で、
それほど危険性や重大性がある
テーマではなく、即座に手順を変えなければいけないほどの
話でもないのです。
あたかも重大なコンプライアンス違反が全国津々浦々の病院で
行われていたかのような報道を行う意味は全くありません。


どれくらいの感染確率があるものなのか、医学的見地から危険性を
調査・考察もせずに、
ただいたずらに不安をあおりPVを上げて
広告収入を得ようという姿勢は、悪質なアフィリエイト・サイトと
ほとんど変わりません。
冷静な立場からの報道がもっと増えてくれればいいのですが。
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