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なんというか。
ケーブルオカルティズムが、まさかHDMIの時代に蘇るとは。

“音”を追求したHDMIケーブルが生まれた理由――サエク「SH-1010/810」
(ITmedia, 2008/6/30)

http://plusd.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/0806/30/news044.html


そのうち、HDMIケーブルもエージングすると音が良くなるよね、
なんてことを言い出しそうな勢いです。
ノイズを吸収するトルマリンケーブルとか、脳内α波を増幅する
マイナスイオンケーブルなんてものがITmediaに取り上げられる
日も近いかもしれません。



最高級品「SH-1010」は3mで¥64,050。
開発費の回収を考えるとボッタクリ価格ではないのでしょうが。



話を戻すと・・・
HDMIの伝送路上のデータ信号はすべてデジタルデータです。
ここでデータや音質に影響が出る可能性を挙げると
 (1)外部ノイズ混入・クロストークなどによるデータ化け
 (2)ジッタによる通信エラー
 (3)GND経由で受信機器の電源系統にノイズ混入
のいずれかとなります。


まず(1)から。
HDMI上の信号はエラー訂正情報を含めて送信されるため、
たいていのエラーはここで消えてしまいます。
さらに、オーディオ信号はビデオ信号以上の高信頼性を保証する
ために4b/10bといった高い冗長度を持つコーディング方式
(TERC4)でエラー訂正をしています。

もちろんあまりにも
品質のケーブルだと、波形のなまりや
クロストークなどによって訂正不可能なほどのエラーが発生する
可能性はあります。
しかし、訂正が効かないほど盛大なエラーが乗るような状況では
音質とか画質とかを語る以前のひどい出力となります。
そもそも普通に使ってエラーが発生するようなケーブルは
HDMIの適合試験をパスできません。

HDMIと同様のシリアル通信規格としてSATAがあります。
通信速度もほぼ一緒でコーディングは8b/10b。
より劣悪な環境下(PC内部のノイズ乗りまくり)で高速通信する
SATAでも、訂正不可能なエラーが発生しているなんて状況は
見たことがありません。
SATAケーブルは無印の怪しいやつが300円以下で買えますね・・・

※15mなんてHDMIケーブルが通信できるのかどうかは微妙ですが。
(補記:こういうのを使うと20m overまでいけるぽい。すげー)
まあ、eSATA最大長の2m程度なら、日本の家電メーカー製ケーブルで
訂正不可能エラーが出ることはまずないでしょう。


次に(2)
Audio CDやSPDIFなどはクロック信号が入っていないため、
ジッタの影響がそのまま音声に出力される場合もあり、この延長で
「デジタルであってもジッタにより必ず音声は劣化する」と
考える人が多いのかもしれません。
しかしHDMIはデータ信号と共にクロック信号を送信しています。
データを1セット送るたびにクロックで同期がとられるため、
すべてのデータはジッタの影響込みで同期されて取り込まれます。

取り込まれたデータはある程度バッファリングされて、本来の
再生周波数でDACにかけられますので、この段階でHDMI経由の
ジッタの影響は完全に排除されます。
むろん、データの取り込みに失敗するほどの盛大なジッタが
乗ってい
れば話は別ですが、これは(1)と同様、そんなケーブルは
規格適合品のお墨付きを得ることはできません。
またバッファのオーバーフロー/アンダーフローが発生すれば
音声信号にも欠損が発生しますが、これは送受信機器の問題で、
ケーブルの責任ではありません。

もちろんCDのように、同期のたびに
サーボ駆動で回転速度や
ピックアップ位置を制御し、駆動ノイズが乗ってしまうことも
ありません。


最後の(3)。これは多少効いてくるかもしれません。
電源ラインから回り込む高周波ノイズはかなり厄介者です。
具体的には
 1. ケーブル内のクロストークでグランド線にノイズが乗る
 2. ノイズが受信機側のグランドに伝搬
 3. 音声再生のためのクロックを生成するPLLのグラウンドが揺れる
 4. 音声再生周波数が揺れる
といったパスが考えられます。

ですが、1V(±0.5V)程度の低電圧で動作する、しかも差動信号の
クロストーク程度のノイズが、ケーブルのグランドから機器内部に
侵入し、あまつさえPLLの発振を揺さぶるというのは、あまりにも
機器の設計がお粗末。レシーバチップが信号解読時にグランドを
揺する、という話ならともかく。
グランドの安定はケーブルでどうこうする/どうこう
できる
問題ではなく、機器の電源系統からきちんと考えて設計しないと
対処できません。


HDMIケーブルで音が変わる!と主張するのは、ケーブルで音が
変わる程度のへっぽこな回路設計の機器を使っていることを
威張っているのと、たいして変わらない気がします。
GHz帯信号の取り扱いはノウハウが必要な分野ではありますが・・・


というか、
その音質は低域の立ち上がりが非常に高速で
パンチがあり、
開放的で明るい音がすること。
そして高域の描写が実に
滑らかで音場は豊か。
多くの情報が濃密にスピーカーの間を
埋めて
くれる。
人間の聴覚でそこまで知覚できるほどPLLの発振周期が変動すると
いうのなら、
ケーブルごとにPLL発振のジッタを計測して比較すれば
明らかな差異が出るはず。
ITmediaに広告出すほどのケーブルメーカーなら、ジッタ測定器
くらいは当然持っているでしょうし。



興味がある方は↓のような論文を読んでみると良いかもしれません。

東京情報大学 総合情報学部 情報文化学科
映像・音響研究室(音響系) 研究成果発表
http://adlib.rsch.tuis.ac.jp/~akira/hit/papers/

CDのメディアによるジッタの違いや、同軸と光ケーブルの比較など
興味深いデータがいろいろと公開されています。
実際の測定データを元に考察を展開している、貴重な資料です。


EDNの記事にもいいものがありました。

オーディオ品質とクロックジッター
http://www.ednjapan.com/issue/2007/09/u3eqp30000014s5w.html

まあ、こちらはTIの投稿記事なので、問題が起きる可能性を誇張して
「TIのチップを使えば高音質になるから安心して買え!」
という雰囲気があるため、話半分に読んだ方が良いかもしれませんが・・・
(内容的にはとても役に立つ記事です、念のため)
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