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以前取り上げた居酒屋タクシーの記事
これにからんで、愛知県の教職員の給与輸送にタクシーを
使っている件が問題となっているようです。

愛知の県立学校、タクシーで給与輸送 年、数百万円使用
(中日新聞, 2008/7/8)

http://www.chunichi.co.jp/s/article/2008070890064822.html

記事の内容自体は特に見るべき物はないのですが、
典型的な「文章のマジック」の例として興味深かったので
少し分析してみます。
ポイント(というほどのものではないけど)は2つ。


■ポイント1
数値を大きく(小さく)見せるテクニック

輸送費用は2007年度、県立学校で使った
タクシー代1100万円の半分程度を占め、
県庁全体の7000万円余の1割近くに上った。

ここで実際の額を出さないのがポイント。
記事の他の部分を見ても、実際の額はどこにも書いていません。
(タイトルにすら書いていない)

「○○の半分程度」○の1割近く」
いかにも
二重価格っぽいやり方です。
「大根100円!」
という代わりに
「大根190円のところを半額近くでご奉仕!」
と書くようなもの。
(安く見せるか、高く見せるか、の違いはありますが)
普通の店でこんなことをやりすぎると、景品表示法違反で
公取委におしおきされます。


■ポイント2
権威の意見を都合良く取り入れるテクニック


記事の最後の締め。

◆ばからしいコスト
■三重大の児玉克哉教授(社会学)の話
タクシー代だけでなく、銀行まで往復する
人件費や手間を考えると、ばからしいコストが
かかっているとしか言いようがない。

経済学や銀行関係者ではなく、なぜ社会学の教授に
話を聞くのかが謎。
しかも大学教授に現金輸送のコストなどの実務的な
経費の意見を聞いてもどうしようもない。

むろん、この児玉教授の意見自体がどうしようもない、
というのではありません。
「現金輸送にタクシーを使って600万円かかっている
そうですが、どう思いますか?」
とだけ聞かれれば、ほとんどは「ばからしいコスト」と
答えるでしょう。

だいたい、記事の正当性を強調するだけのために
権威を利用しようという魂胆がなさけない。
大学教授のお墨付きを貰わなければ自分の意見も書けないのか。



まあ、文章について重箱の隅をつつくのはこれくらいにして
冷静にコストを算出してみましょう。

まず、現金支給を受けている教職員の人数は344人。
平均年収を746万円とすると(2005年調査)、この総額は
344*746万円=25億6624万円。
この金額を輸送するコストが600万円だったとして・・・
その比率はわずか0.23%。
このコストのいったい何が問題となるのか。
全くの謎です。

他県では銀行に運搬を依頼か、自家用車で運搬していると
記事にありますが、銀行に依頼したところで運搬コストが
銀行側に移るだけで、問題の解決にはなりません。
むしろ銀行が現金を運搬する場合は、過大な「信用」も
運ばなくてはならないので、結果とんでもないコスト増に
なってしまう。

給与の運搬は、その給与が銀行口座に振り込まれないため
銀行にとっては全くメリットがありません。
当然、運搬に当たっては相応の対価が必要となります。
銀行もボランティアで運営しているのではないのだから、
無料で運んでくれ、なんて要求がそうそう通るとは思えませんし
対価なしで無料で運ぶこと自体が不当な便宜と見なされる
可能性も十分考えられます。
というか不当な便宜でしょう、確実に。
(居酒屋タクシーが無料でビールを提供するのと同じ)

それでは学校の経理担当者が自家用車/公用車で運搬・・・
ってそっちのほうが大問題でしょう、常識的に考えて。
多額の現金を、しかも他人のソレを運搬するという行為は、
当然のことながら大きなリスクを負う行為なのです。
むしろ普通の民間会社なら、警備会社にきちんと依頼して
運搬してもらうレベルの話。
タクシーで運搬するなんてリスク管理が甘い、と非難する
ならともかく、自家用車で運べとかありえない話。

自分の給与が経理のおばちゃんの軽乗用車で運ばれてくる、
なんてシチュエーションが許容できるのなら、それはそれで
すごい胆力だとは思いますが。
「事故って車ごと燃えちゃったので、今月分の給料は
子ども銀行券で勘弁してね。わはは」
なんて言われて笑ってスルーできる自信はありません、私には。


あるいは本気で0.23%のコストの削減を考えるのならば、
「給与をタクシーで運んでいるのは愛知県だけ」などと
タクシー利用を叩くのではなく、

地方公務員法で給与は「通貨で直接、職員に
支給」とされており、振り込みに変更するには
本人の申告が必要。

というしくみを変えて、一律振り込みにすることはできないか、
その際のデメリットは何か、実現に際する障害は何か、を
法改正も見据えて冷静に分析すべきでしょう。

「世間が公務員のタクシー利用を叩く雰囲気だから
ついでに便乗して叩いておけ」
程度のノリで、世界に発信される記事を書かないでほしいものです。
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